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キプリング童話集ー動物と世界のはじまりの物語ー

 

ラクダにこぶがあるわけ、クジラが小魚しか食べられなくなったわけ、手紙のはじまりなど、想像性ゆたかな物語集。本書は戦後出版されたフィッシャーによる挿絵版(小宮由訳、2021年)です。

キプリング自身が挿絵をつけた原書(1902年)は、『ゾウの鼻が長いわけ キプリングのなぜなぜ話』(藤松玲子訳、岩波少年文庫、2014年)として出ており、読み比べてみました。
目で読むにはすっきりとした流れのよい小宮訳、原文の特徴という言葉のリズムやひびき、声に出したときのおもしろさを生かす工夫をしたのが藤松訳。挿絵は、フィッシャーがユーモラスで楽しい。キプリング自身の挿絵は、物語の1場面に細々と解説をつけており、これにリアルさを感じて興味を引かれる子がいそう。
どちらにしても、キプリングが我が子にしたように声に出して読んであげると、自分で読める子もより楽しめるのではないでしょうか。 (は)