児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

先生、ウンチとれました

 

腸内細菌の研究者で「動物のウンチ博士」と呼ばれる著者。アフリカ、アジアの熱帯林、砂漠、サバンナ、高山地帯や日本国内の山林など各地に通っては、野生動物の糞を採集。野生と飼育動物で異なる腸内細菌の組成を分析し、保護動物を野生に帰すために必要な細菌を解明しようとしている。現代人の健康問題の解消にも腸内細菌が重要であることもわかってきている。

それにしても、採集作業はなかなか大変だ。例えばゴリラの場合。山に登る→ゴリラを探す→糞をするのを待つ→糞をしたらその場から動くのを待つ→糞に駆け寄って即採取(時間がたって冷えたものはダメ)→培地に少量塗りつけて脱酸素剤を入れた密閉袋へ→夜通し温め細菌を培養、といった具合。

ここで大活躍の共同研究者、土田さやか博士が頼もしい。とにかく時間との勝負。糞に駆け寄る姿や現地アフリカのんきな助手くんに少々イラつく様子が目に浮かび、ついくすっとなってしまう。「役に立つ」ではなく「不思議」「なぜ?」から始まる研究の可能性と楽しそうな世界が広がります。 (は)