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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ヒルズ・エンド

 

山に囲まれた小さな村ヒルズ・エンドの人々は、年に1度町へくり出すピクニック・デイに心浮き立っていた。その朝、マグナス川が「騒然とした音をたて・・・異常にふくれ上がっている」ことに気づく者はいなかった。やがて昼にはその辺り一帯を激しい台風が襲い、村は孤立してしまうのだが。その日、留守番役の製材工場の監督と、小学校のエレイン・ゴッドウイン先生に7人の子どもたちが村に残った。先生と子どもたちは切り立った崖の洞穴にあるという原始人の壁画を確かめるため山へ向かう。そして、この子どもたちも先生と離れてしまい、町へ出かけた親たちが救助に戻るまでの2日間を懸命に生き抜くさまは壮絶。子どもたちだけで村の惨状を目の当たりにする場面は、近年、日本各地を襲う水の災害映像が克明に浮かんでしまい、辛くはある。でも、子どもたちの生き生きとした個性や心情描写、そして成長への共感が最後まで読ませます。 (は)