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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

しあわせなときの地図

 

絵本形式で文字も少ないのでよみきかせに使えるが、内容を理解できるということを考えると10歳の主人公ソエと同じの小学校の高学年位からか? ソエは、戦争のために生れてからずっと過ごしてきた町を離れて、外国に逃げなければならなくなった。町を出る前の晩、地図を広げて楽しかった場所をたどる。最後にそれらを線で結ぶと自分の名前が浮かび上がった。楽しい思い出は失われない、戦争が終わったらいつか戻ってくる、そんな思いを抱いて旅立ちます。ヨーロッパ風の風景だが、どこの国ともいつの戦争とも明示されずに物語は進む。多くの人々が難民になっているが、それらの人たちはなりたくて難民となったわけではなく、故郷に帰りたいのだ、という当たり前のことを見直す原点になる。日本にいると、こうした出来事を身近にみることがないので、せめて本で、主人公の気持ちになって体験するのも重要であろう。