児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

シマフクロウとサケ

 

山に住むシマフクロウの神が、浜辺へ下りてきて木にとまり沖を眺めていると、神の魚であるサケが群れでやってきた。先頭のサケがシマフクロウに気づき、畏れつつしむよう仲間に呼びかけるが、どんじりにいるサケたちは、フクロウの大きな目玉をばかにする。怒ったシマフクロウは、金銀のひしゃくを取り出し海の水をくみ出してしまう。もがき苦しむサケたちの姿を見て、我に返ったシマフクロウは、海の水を元に戻し山へ帰っていく。
神も怒りを抑えきれなかったり、それを反省したりもする、親しみある存在である。人間も同じようにお互いを尊重し、分をわきまえて役割をつとめることが大切。どんじりのサケがシマフクロウをばかにする言葉は、汚れた色に染まって口から出ているように描かれている。文字を持たず口承で物語を伝えてきたアイヌの人々には、言葉が見えたのかもしれない、と思わされました。古い布とアイヌ伝統の刺しゅう技術を用いた挿絵。2006年福音館書店より刊行されたものに、原画の全体を一覧できるページを加えた。 (は)