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精霊と魔法使い―アメリカ・インディアンの民話

『精霊と魔法使い―アメリカ・インディアンの民話』

マーガレット・コンプトン再話 ローレンス・ビヨルクンド絵

渡辺茂男訳 国土社 1986年

 

人間も動物も、精霊も魔術師も、巨人も小人も、濃密にからみ合い壮大で重層的な世界観はほかにはない感じ。
両親も悲観するほどのなまけ者の息子が旅に出て、魔女の助言により種族最大の敵を倒す「なまけものの『白いたか』」は、胸がすく話。 「戦う野うさぎ」では、魔術の力で誰でもやっつけてしまう野うさぎのことを恐ろしがって、太陽がほら穴に隠れてしまう。人間のことを考えなかった太陽は罰せられ毎日同じ道を動かなければならなくなったという由来譚。だがそれに至るまでの野うさぎの悪事がすさまじい。 鬼ばばから火を手に入れたい人間がコヨーテに取りに行かせると、火種はピューマ、くま、こうもり、りす、かえるへと次々に渡って無事に届く「『コヨーテ』または『草原のおおかみ』」は易しく読める。全部で16話。リアルな挿絵に迫力があります。 (は)