児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

子ども、本、祈り

 

福音館書店の元編集者、児童文学作家で、現在キリスト教幼稚園の園長をしている著者の評論、エッセイ集。
第1章を読み始めてまもなく、ごく最近わたし自身も心にとめた言葉が目に入りはっとしました。「耳をすます」。「私たちの話に耳をすましてほしい」とおとなに訴える若いひとの言葉を私は聞きました。斎藤惇夫さんは、「耳をすますことが、人間にとって最も大切」で、「『耳をすます』ことのよろこびと大切さ、豊かさ」を、子どもたちは遊びと絵本を通して体験しているといっています。この第1章は、幼稚園の子どもたちのようすを率直につづり、なぜだか胸が熱くなります。
第2章は祈りの詩。 第3章「愛書探訪」は、どれも説得力のある評論。特に、40代終わりに書いたという評論『たのしい川べ』(ケネス・グレアム作)は、悲愴な迫力があります(その後フィリッパ・ピアスさんとのやりとりで、今は楽しく読んでいるとわかります)。 第4章は、子どもを本好きにする「レシピ」集。「子守歌」「わらべうた」から「絵本」「詩」「昔話」そして自分で読む「読書」へ。10歳まではおとなが読んであげてほしい。そしておとな自身が楽しんでほしい。「読むよろこびが生きるよろこびにつながる」ほんとうの「子どもの本」は、生涯の友となることを実証してくれています。 (は)