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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

挑発する少女小説

 

児童文学研究者ではない斎藤氏が、柔軟に本を楽しむ力のある著者だけにやはり面白かった。いわゆる少女小説の古典を読み直し、最後に/シンデレラ物語を脱構築する『小公女』/異性愛至上主義に抵抗する『若草物語』/だ稼ぎ少女に希望を与える『ハイジ』/生存をかけた就活小説だった『赤毛のアン』/社会変革への意思を秘めた『あしながおじさん』/肉体労働を通じて少女が少年を救う『秘密の花園』/父母の抑圧をラストで破る『大草原の小さな家』シリーズ。/正攻法の冒険小説だった『ふたりのロッテ』/世界一強い女の子の孤独を描いた『長くつ下のピッピ』/と本人がまとめているが、私が特に面白かったのは『秘密の花園』の後半、主人公がメアリイからコリンに変わってしまうとしか思えない展開になっているところを、あえてとどまってメアリイの視点でラストを見ようとしている所だった。また『ふたりのロッテ』がなぜ『ルイーゼとロッテ』ではないのかという謎解きも納得。あらためて、女の子たちを励ましてきた少女小説の魅力が再発見できる。