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荷抜け

 

江戸時代末期、信州の貧しい村で、ぼっか(荷物運搬)をしていた父が足を滑らせて亡くなった。必死に仕事をした母もなくなり、大吉と妹のキヌは残される。キヌは奉公に出され、大吉はなんとか田畑を耕すが、折からの凶作で追い詰められ、牛泥棒をしようとしたところを、父親の仲間に助けられて、牛追いのぼっかの仕事に加えてもらった。だが、懸命に働いても村人たちは飢えるばかり、追い詰められる中で、大吉は荷抜け(請け負った荷物を持ち出すこと)をして、それを元手に貧しい人間が安くものを手に入れる仕組みを作ろうと考え、決行する。一部の人間でやれば大罪。だが、みんなが共同してやれば荷運び無しでは立ち行かないから勝機がみえるはず。実際に史実であった出来事をヒントにした作品とのことだが、物語展開が、やや作者の思いが先走った感じがした。シーンがちょっとブツブツとした感じで、心情の変化がなめらかに描写されていない。主人公の大吉も江戸時代の百姓の子というより、現代の子どものような雰囲気がする。せっかくなので、もう一息、しっかり書いて欲しかった。