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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

ミシンの見る夢

 

洋服は家で縫った時代、きちんとした裁縫師ではなく、裕福な家に、通いで出かけて仕事をするお針子の仕事をしていた祖母。家族をコレラでなくし、祖母に引き取られた主人公は7歳から針を持つ。手に職をつければ飢えずにすむ。学校には行けなかったが、祖母の配慮で字を学ぶチャンスを得て、少しづつでも学んでいく。通いでさまざまな家に行き、さまざまな出会いをする。一人娘として自由に育てられたエステル嬢は、開明的で主人公を常にはげましてくれる存在になってくれた。ある大金持ちの家庭は、だれにも言えない秘密のために破滅する。進歩的女性ジャーナリストとして活躍するミス・リリーは、母国アメリカに帰ろうとした直前に不自然な“自殺”をした。魅力的な青年グイドとの出会いに心惹かれるが、彼の正体は思いがけないものだった。おおよそ100年位前の、貧富の格差が激しく、女性の地位も低かったイタリアの小さな街で、自分の腕に誇りをもって生きる少女の成長物語。『わたしのクオレ』の作者による、とても魅力的なYA作品。