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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

青いつばさ

 

ジョシュは、11歳。5歳年上の兄ヤードランの面倒をずっと見てきた。大好きで大きな兄だが、心は小さな子どもで、夢中になって興奮すると、何も他のことが目に入らなくなって突き進んでしまう。最近かあさんの新しい夫とその娘ヤスミンが引っ越してきた。二人の父さんは、母さんを捨てて、ずっと昔に家を出てしまったので、ジュシュには父さんの記憶がほとんどない。偶然見つけたけがをしたツルの子どもに夢中になったヤードランは、家でツルの子の看病をし、飛び方を教えようとして、昔、母さんが舞台女優だった時に使った青いつばさをつけて高いところにあがろうとした。なんとかやめさせようと代わりにつばさをつけて登ったジュシュの後から、興奮したヤードランはついてきてジュシュを突き落としてしまった! 両足を骨折したジュシュを見て、母さんは、力が強くなってきたヤードランをずっと家で見るのは難しいと、それまでも通所していた〈空間〉の寮に移そうと決意する。家を離れたくないヤードランと、兄と一緒にいたいジュシュは病院を脱出。兄のトラクター(農業実習で使っている)につるの子と乗って、つるを南に連れていくと言い張るヤードランと共に旅に出る。大好きな兄ではあるが、バクハツすればコントロールは効かない。幼い時から、その兄に配慮してきたジュシュはヤングケアラーとも言えるだろうが、兄が大好きなのも真実なのだ。二人を長年必死に守ってきた母、施設の親身な職員ミカ、そして新たに家族となった継父とヤスミンなど、周りの人たちの姿もしっかり描かれている。車いすでヤードランと旅をして、生まれて初めて周りの人間が自分のことをヤードランに「その子大丈夫なの?」と言っているのを聞き、逆転した立場を新鮮に感じるジュシュ。二人と1羽の逃避行が魅力、最後までドキドキしながら読める。