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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

雲を紡ぐ

 

同級生からからかわれたことがきっかけで学校に行けなくなった美緒。教師の母、電機メーカーの父と三人暮らしだ。母は自分の母(美緒には祖母)と仲が良く。育児を助けてもらったこともあり、祖母はよく家に来ている。学校に行くようにと説得する母と祖母、何も言わない父。ある日、美緒が小さいころから大切にしていた赤いストールを母が処分したことをきっかけに、美緒は衝動的に家出をしてしまう。行先は父の故郷。父方の祖母はすでになく、祖父とは不仲で交流がない。だが祖父は「山崎工藝社」という羊の毛を紡いで作るホームスパンという工房をしていた。その工房ののどかな写真に心ひかれたのだ。祖父はぶっきらぼうだが、美緒を好きにさせてくれた。そして美緒はホームスパンの仕事に少しづつ魅せられていく。登校拒否の娘がいることもネタにバッシングを受けている母。会社の吸収合併を前に、身分が不安定になっている父。それぞれが悩みを抱えてギクシャクする夫婦関係。美緒の将来のため学校に戻らせようとする祖母。常に周りに怯え、言いたいことも言えず縮こまって薄笑いを浮かべることしかできない美緒。何度も掛け違い、出口が見えないような中で、最後はやっと光が見えてくる。母が、美緒に向かって甘えてばかりとキレ、いつも委縮している美緒が登校拒否の娘がいることで批判されるから学校に行かせたいんだと言い返すところが、身に迫りました。私も娘が登校拒否になった時に、自分に向けられる社会的な視線がたまらなかったので。ちなみに、美緒は通信制高校に入りますが、今は高卒認定試験は優しいので、通信制ではなく試験を受けた方が大学への近道になるよ、と教えてあげたくなりました。