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銀のスケート―ハンス・ブリンカーの物語

 

 

オランダの子どもたちの冬の楽しみは、凍った運河をすべるスケート。そして、スケート大会で優勝すれば銀のスケートがもらえるのだ。しかし、ハンスと妹のグレーテルには、ハンスが自分で作った木製のスケートしかない。父親は、洪水から堤防を守る際の事故で頭を打ち、10年間正気を失ったまま。母親が介護をしながら家庭をきりもりする生活は貧しい。兄妹で家の仕事を手伝い、ハンスは得意な木彫り細工などで家計を助ける日々では、練習はおろか本物のスケートを手に入れることもままならないのだ。せめて父親が、1000ギルダーのお金を埋めた場所を思い出してくれれば・・・。やがて、有能だが無愛想な老医師との出会いから、奇跡的な縁が重なって、ブリンカー家は、なんとも幸せな結末を迎える。

貧しいが正直な少年ハンスの物語に、6人の少年たちがスケートでオランダの街をめぐる旅が織り交ぜられる。オランダの風土や歴史、街並みについての描写が細かいが、1つ1つの章立てが短いのと、父親の病は治るのか、ハンスは大会に出られるのか、銀のスケートを手にするのは誰か、といった興味が引っぱって読ませるので、そのあたりを推して高学年くらいから、ぜひすすめたい。 (は)