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ピートのスケートレース

 

第二次世界大戦、ドイツ占領下のオランダに暮らす10歳のピートには夢があった。憧れるスケーター、ピム・ムリエイルのように、11の町をめぐる200キロのスケートレース大会に参加することだ。
1942年1月のこと。同じ学校で1つ下のヨハンナのお父さんを、ドイツ兵が連行していった。家族にも危険が迫り、ヨハンナと弟はベルギーのおばさんの元へ避難することに。ピートは、2人を送り届ける役目をまかされる。大運河をすべる16キロの道のり。途中の国境にはドイツの警備兵がいる。ピートたちは、おばさんの手伝いに行くきょうだいとして、そこを無事に通り抜けなければならない。兵士との張りつめたやり取り。ピートの持っていた手帳に描かれた地図を見て、兵士が問い詰める。それは、スケートレースでめぐる11の町名を記したもの。ピートは偉大なレース大会への思いを必死で訴えた。ふと、兵士の態度が緩む。それは敵国さえも一目おくレース大会だったのだ。そしてピートは、無事に役目を果たすことができたのだ。

茶系に統一された挿絵は、戦中の重く苦しい空気を漂わせるが、オランダがスケート大国たるゆえんも知る物語。  (は)