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こわれた腕輪 ゲド戦記Ⅱ

 

初めて読んだとき、「喰らわれし者」というイメージがとても鮮烈だった。再読してみて、現世の力をふるう大王、そして神に使える立場だが、実は権力にしか関心をもたないコシル、けれども失われたようで実は恐ろしい力を持つ闇の存在感を強く感じた。ゲドとであったテナーの迷いと、脱出した後の苦しみを見ていると、ゲドが最初はテナーに華やかな暮らしを約束するが、最後にオジオンとの内省的な暮らしを提案するようになるところが興味深かった。テナーは救い出される姫ではなく、自分で歩みだし、ゲドをも救った対等の存在。一つになって平和をもたらすエレス・アクベの腕輪は象徴的だが。平和は永遠ではない。そして、物語が続くことを思わされた。