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帰還 ゲド戦記Ⅳ

 

オジオンの元にあずけられたテナーは、普通の女として生きることを望み、ゴハと名乗って結婚し、子どもを産み、子どもが独立して夫がなくなった後、一人で農場を切り盛りして暮らしていた。偶然のことから虐待を受け、殺されかけた女の子テルーを引き取ってそだてることとなった矢先、オジオンが危篤の知らせを受けてテルーと共に駆け付ける。オジオンの最後をみとった後、竜のカレシンに乗って、疲れ果ててやってきたゲドを迎える。3巻の直後の物語だが、実際にはもう完結したと思っていたところに登場した物語。初めて刊行された直後に読んだときは、正直失望した。なんとなくフェミニズムっぽさが目立つ感じがわざとらしく感じたのだ。だが、今回読み返してみて、特に気にならなかった。私自身の意識が変わったのかもしれない。男ばかり魔法使いの世界にいたおかげで、″女の仕事”を抵抗なくするゲドや、自分の男の子育ての失敗に気づくテナーの姿が、昔読んだ時には目立つ気がしたのだが、今回は特に気にならなかった。ゲドとテナーの関係も、そうよね、そもそもこうなるよねと納得。力を全て失くしたゲドが、その自分を受入れ、他人に対しても今の姿でいたいと思うのは、自分が年齢を重ねてきて、やっぱりゲド、すごいなと思わされた。若き王のはつらつとしたスタート、そしてゲドとテナーの二人に襲い掛かる危機に対しての思いがけない逆転劇。そしてテルーにはテハヌーという真の名が明らかになる。初めて読んだ時も、ここは迫力!と思っていたが、一番傷つけられた無力な者の持つ力とは何なのかを、あらためて考えたいと思う。