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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

カイウスはばかだ

 

古代ローマが舞台だが、現代にもいそうな少年たちのありがちないざこざが、大きな事件へ展開するスリルと謎解きがおもしろい。
貴族の子息たちが通うクサントス学校。7人しかいない生徒の1人ルーフスがある日、書字板に「カイウスはばかだ」と書いたことからつかみ合いのけんかが勃発。ルーフスは、日頃からカイウスにちょっかいを出され腹を立てていたのだが、罰として担任から退学を命ぜられてしまう。その晩、担任のクサンチップス先生が何者かに襲われ、ルーフスの書字板が盗まれた。さらに、神聖なるミネルウァ神殿の壁に、真っ赤な絵の具で「カイウスはばかだ」と落書きされているのを発見した生徒たち。牢屋に入れられたルーフスを救うべく、少年たちの真実の追究が始まる。

手がかりは、落書きの筆跡鑑定、先生の部屋に残された金のくさり、いち早く事件を告げた日報、そしてけんかの翌朝びしょぬれで帰宅したというルーフス。名高い予言者ルーコスの存在も怪しい。クラスの主席ムキウスが、ルーコスの家から裏手の浴場への抜け道を偶然みつけたことから、少年たちはルーフスの無罪を確信。気むずかし屋と思っていた先生の協力も得て、事件は解決へ向かう。発端は、大人のつまらない保身のためだったというのも、ありそうで納得の結末です。 (は)