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妖精ディックのたたかい

 

中世のイギリス。コッツウォルド地方の小さな村の屋敷に、家つき妖精ディックは何百年も暮らしている。そのウィドフォード屋敷に新しい住人が引っ越してきた。ウィディスン氏と若い妻、5人の子どもに赤ん坊。子どもが好きなディックは大喜び。ことに、最初に会った少年ジョエルと老婦人は、いなか暮らしが気に入っているようすが好ましい。また、もうひとりのお気に入りアンは、新しい夫人の小間使いとして近くの屋敷から雇われてくるが、実は子どもの頃この屋敷に出入りしており、敷地内に隠されたカルヴァー家の宝の正当な継承者だった。

ディックは、魔女にさらわれたウィディスン家の娘の救出や、ジョエルとアンが結ばれるために、妖精として出来ること(夢に現れて進言する、霧で人を惑わす、馬を走らせて大事な手紙を届けるなど!)で力を尽し、最後はアンによる感謝の贈り物の中から、人間に仕える立場に別れを告げるものを自ら選びとり、天上へのぼっていくのです。

タイトルの「たたかい」からイメージするものよりも、むしろ人情味あふれる妖精ディックの心の動きや行動、そして魔法のように特別な能力ではなく見込み違いや失敗もするところに親近感をもちながら読める。 (は)