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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

グリーン・ノウのお客さま

 

冒頭のアフリカでのゴリラの暮らしから、一気にゴリラの子が捕らえられてイギリスの動物園に送られた後の姿で、ゴリラのハンノーが失ったものがよくわかる。そのハンノーと出会ってしまった難民の孤児ピン。ピンは、飼育長さんからゴリラについて説明してもらうが、具体的なこの説明が、後半のハンノーの脱出とそれを支えようとするピンの行動にリアリティをもたらしている。夏休みに川や森がある古いお屋敷グリーン・ノウに招待してもらったピンは、その森で動物園を脱走してきたハンノーと出会う。単純になかよしになるのではなく、危険も感じながら注意深くふるまうピン。親切なグリーン・ノウのおばあさんに本当のことを言えない苦しさ。そして、ハンノーに餌を与える難しさと、悲劇的な最後までが、本当にあった出来事としか思えない迫力で描かれる。派手ではないが、忘れがたい魅力を持つ作品。