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思い出のマーニー(上)(下)

 

 

主人公のアンナは、学校で友だちのいないことや無気力に見える態度を、養い親のミセス・プレストンから心配されていました。お医者さんのすすめで、海辺のペグさん夫妻のもとで暮らすことになります。アンナは、古い屋敷の舟つき場や浜辺に、自分の居心地のいい世界を見つけて1人で楽しんでいたある日、マーニーという同い年の少女と出会います。念願だったひみつの友だち。お互いのことをいろいろ話し、すぐにうちとけます。でもマーニーは、急に現れたりいなくなったりする不思議な子で、しかもアンナ以外の人には見えないようなのでした。
冒頭からアンナの苦しく内に向かう心の描写が、衝撃的でつかまれます。養い親のミセス・プレストンとお互い素直に愛情を伝え合えないぎこちなさが、海辺の町に新しくやってきた一家のミセス・リンゼーの仲立ちで、ほぐれてゆく穏やかなラスト。思春期の嵐を越えた先はそんなものかと思わせます。 (は)