児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

言葉の力 人間の力

 

異分野、2世代の4人がリレーする5つの対談を収める。

1926年生まれの松居直氏と加古里子氏に共通するのは、日本のアジア侵略に対する償いと、戦争に生き残った自分はどう生きるかという思い。1936年生まれの中村桂子氏と舘野泉氏は、疎開先で触れた自然、くらし、遊び、空襲に焼けた本やお雛様といった子ども時代の記憶に、通じるものがある。

対談は2011年の3月~8月に行われたことから、司会者が、東日本大震災後の思いについて尋ねている。自然誌科学の中村桂子さんは、「技術より人間を大切にするようになるという予感」を伝え、児童書編集者の松居直さんは、「(人類の)重大な岐路」として、過去、現在を知って未来を展望することを。左手のピアニストの舘野泉さんは、「いいと思ってやってきたこと(日常の行為)を続けていくしかない」と力強く。そして絵本作家の加古里子さんは、遊びの中で正しさを解っていく子どもへの揺るぎない尊敬を。

心に留めたい言葉は多々あり。その言葉や生きざまを受けて、自分はどう考えるか。人の声、言葉で、伝え続けてゆくことなのだと思います。 (は)