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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

昔話の扉をひらこう

 

著者は、昔話研究を一筋に70年以上。昔話は子どもの成長を助ける、だから身近な人の声でぜひ語ってあげてください、と一貫して伝えてきた。その理由は、昔話のもつ特徴にあるということを、易しく解説している。

音とリズムの心地よさ。耳で聴いてわかりやすい仕組み、すなわち語り口。3回のくり返しが、先の展開を類推する思考力を育むこと。教訓とみられがちな内容は、人間(子ども)への信頼を語っていること。何よりも、場面を想像しながら聴くことは”能動的な楽しみ”であること。
自身の半生や、柳田國男からの忘れられない言葉にもふれ、著者の人柄が垣間見える。

日本とグリムの小さなお話集や、昔話の覚え方のコツ、そして2人の息子との親子鼎談もつく。この鼎談がひときわおもしろい! 次男の小沢健二による「言葉」論の熱いこと。「言葉=骨=記憶」という説がなるほど、です。そして鼎談ラストのエピソードがふるっています。息子たちが幼い頃の一時期をドイツに暮らし、2人ともドイツ語を身につけたが。ある日健二は「どうして、鶏は日本語で鳴くの?」と父親に尋ねたとか。鶏の鳴き声だけは、ドイツ語の「キケリキー」ではなく「コケコッコー」に聴こえたのですね。 (は)