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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

世界一やさしい依存症入門

 

著者は、薬物依存症を専門とする精神科医。依存症に対して言われがちな「自己責任」「ダメ人間」「かまってちゃん」といったイメージを変えたいと、本書を執筆。多くの事例を挙げながら、なぜ度を越してハマってしまうのか、どうやってそれを脱することができたのか、その過程をわかりやすく解説する。

事例は、どこにでもいるごく普通の中学生。ハマる「モノ」「行為」も、薬物、自傷などの一方、度を越さなければ問題ないもの―エナジードリンクや市販薬、ゲーム、SNS―であったりする。依存症になりやすい人は、「人に依存できない」。人からほめられ認められ「天然のドーパミンの心地よさ」を知っている人は、依存症になりにくいのだという。だとすると、薬物依存を「犯罪」として、法的にも社会的にも「罰」している日本の対策の遅れがよくわかる。「ダメ。ゼッタイ。」ではなく、「失敗ややり直しが許される社会」にしなければならないと、ここにも「失敗」というキーワードが。
コラム「ヒコ先生の相談室」では、依存症かもしれない友人への接し方や声がけをアドバイス。巻末に、困ったときの相談先リストと、当事者や友人、親、先生へ向けたメッセージを載せ、お互いに理解を深め解決の糸口を見つけられそうと思える。 (は)