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111本の木(2022課題図書小学校中学年)

 

111本の木

111本の木

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インド実際に実際にある村を元にした絵本。シャム・スンダル・パリワルは、小さな男の子だった頃、母親が毒蛇に噛まれて死んでしまった。大きくなったパワリルは、大理石工場で働くが、工場が土を掘り返し土砂を捨てたために木が無くなり村が荒れるのを見て、工場をやめる。その後村長になった後で、かわいがっていた次女を亡くした。悲しみの中でパリワルは思い出のために木を植えることを思いつく。インドでは、男の子は大きくなれば家をついで親の面倒を見てくれるが、女の子は持参金をつけて嫁がせなければならないので軽んじられていた。パリワルは、女の子が生まれたら111本の木を植え、女の子を学校に行かせ、大きくなったらその木で持参金や自分に必要な資金が得られる仕組みを考えた。荒れた村に水路を作り、アロエベラを木の間に植えることで木の生育を守り、かつ製品化して村の経済を向上させた。SDGsの推進にもつながる作品だが、読んでいてわからなかったのは、なぜパリワルは村長になれたの? みんなの考え方をかえるためにパリワルは何をしたの? がわからないことだった。パリワルは、良いことをして、おかげで女の子は学校に行けるようになり、村の経済は潤いました。だけど、こうすればいい、とわかっていても、物事が進まないからこそ、世界は混乱している。あとがきの解説部分を読んでも経緯はわからなかった。たまたまパリワルにカリスマ性があったのだろうか? だれもができることなら、みんながやればよいのに、世界はなぜそうならないのか? なんとなく腑に落ちないまま読み終えた。