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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

その扉をたたく音(2022課題図書高校生)

 

老人ホーム「そよかぜ荘」のボランティアでギターと歌を披露した宮路は、最後に施設の職員が一緒に演奏してくれたサックスの音に目をむく。渡部という名札をつけたさわやかな青年。どうしてもその音色をもう一度聴きたくて「そよかぜ荘」に来ると、口の悪い水木のばあさんに買い物を頼まれた。まるでパシリ! と思いつつ、ついつい引き受けながら、なんとか渡部に近づこうと出入りを続ける。まもなく30歳だというのに一度も働いたことのない宮路。裕福な親のおかげで食うには困らない。音楽で生きていきたいと思っていたこともあったが、今は自分でもわからない。頼まれてウクレレを教えた本庄さん。一所懸命だったのに。認知症の発作が起こるとまるで変わってしまった。一緒に「そよかぜ荘」での演奏を引き受けてくれた渡部という友人ができた事に夢中になるが、入居者の死にも直面し、どうして良いかわからなくなってしまう。

人は良いけど、あまりにも子どもな宮路が、多くの老人と触れ合うことで少しづつ大人になる物語、といえようか。なんだか、完璧ともいってよい渡部くんのキャラが、うそくさいほどだけど、福祉の世界だと、本当にこういう青年いるかも。なんていうか、感動しやすいお話しとして感想文に取り組み易い物語だが、そうやって書いたら、いかにもうすっぺらく仕上がりそうだとも思いました。