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みんなのためいき図鑑(2022課題図書小学校中学年)

 

テンポよく読みやすいのは間違いないし、部分的には楽しいのだが、全体がなんだか変な感じがした。主人公は、たのちんこと田之上嵐太。授業で班で何かの図鑑をつくらなければいけないのに、何も案が浮かばない。同じ班の小雪は教室に来られなくて保健室登校だが、ゆらと相談中に小雪がたのちんの「ためいきこぞう」のイラストを描いてくれたのがヒントになり、「ためいき図鑑」というテーマを思いつく。おまけに「ためいきこぞう」は、二人の前だけでは動き出しおしゃべりをはじめた。ゆらも一緒にやれるように図鑑のイラスト担当を頼もうと考えたたのちんだが、絵が得意な小雪に猛反発を受ける。いったいなぜ? そしてどうやって図鑑を仕上げる? とまぁ、ためいきの種類とか部分部分は面白いのだが、一番ひっかかったのは、ゆらが保健室登校になった原因が母親だということと、最後までその解決が見えないこと。まぁ、そういうこともあるとは言えると思うけど、これ、子どもの立場からしたら、かなり辛くないか? 学校ならさぼれても、小学生なら家から逃げられない、その深刻な問題についてなんの展望もなしで大丈夫なのか? 解決しなくても、ゆらにとって、なにか足場が欲しいのでは? と思ってしまったのでした。