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りんごの木を植えて(2022課題図書小学校高学年)

 

小学校5年のみずほは、おじいちゃんのようすがなんとなく変だと思う。いやな予感は的中。5年前に手術した癌が、肺に転移したというのだ。庭の手入れや絵を描くことが大好きで、やさいしいけれども毅然としたところもあるおじいちゃんを、みずほは大好きだった。おじいちゃんが治療をしないというので、みずほは戸惑う。死んでほしくないのに、なぜ治療を拒むの? おじいちゃんは、抗癌剤の副作用に苦しんだり、入院するよりも、痛みを抑えながら穏やかに自宅で暮らしたいという。不安に駆られながらも、一緒の時を過ごすみずほとおじいちゃん。そして、ついに最後の時が来てしまうが、おじいちゃんが生前語っていた「希望」の意味が、少しわかるような気がするみずほだった。
大好きな祖父の死と向き合うというテーマで、著者は夫を亡くし、母をグループホームに見舞うという経験の中で書いているが、おじいちゃんが、徐々に弱っていくとはいえ、ほとんどヘルパーさんにお世話にならずに亡くなっている。だが、ろくに歩けないならトイレも困るはず。こうした介助シーンがほぼないけど、どうしたのか? それとも中学生向けだから深刻なシーンはカットしたのか? などと考えてしまった。誠実な作品ではあるとは思うのだが・・・。