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すてないパン屋の挑戦

 

著者は栄養学の博士だが、著書をみると、主に一般書。児童書なのを意識して文章を書いたと思われるが、いかにも子ども向けに書いています、という文章の雰囲気がという感じが、私にはやや過剰に感じた。モデルである田村陽至氏のパン屋は「捨てないパン屋」として有名というが、正直、「完売するパン屋」と表現した方が良いと思った。日持ちのしない菓子パン販売をやめ、フランスのまき窯に学んだまき窯を作り、まきで焼き、有機小麦を使うことで、素材そのもののおいしさで勝負できる日持ちのよいパンを売るパン屋にした、というドラマ。菓子パン販売をやめることで、やはりパン屋だった父親との対立もあったというが、それはそうだろうと思う。そして、菓子パンや総菜パンが広く食べられているのは事実。これを廃棄しなくても良い方法を考えるのではなく、単に作るのをやめたということでは、「捨てない」というのは自分の店でのこと、とも思ってしまった。もちろん、真似をしたいところには教えてあげているようだが、日本の食品ロスを改善する方法はもっと多様でも良いのでは? 例えば、夕方に売れ残りのパンを複数店から集めて夜遅く販売するパン屋という試みがニュースで紹介されていたが、「捨てない」というとこういうことをイメージするのだが・・・