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香君 下

 

恐れていたオオマヨの大発生。その折、島国のオゴダ藩王母ミリアは、塩分を嫌うはずのオアレ稲を島で育てることに成功していた。しかもその稲はオオマヨにも耐える。だが、アイシャはその新オアレ稲に恐怖を感じる。稲がオオマヨにたかられて、悲鳴をあげて何かを呼んでいる。なにか恐ろしいものがやってくると。だが、オオマヨの大発生の中で、この新オアレ稲は、救いの稲として、瞬く間に普及した。しかし、そこにヒシャというバッタのような虫が飛来する。ヒシャはオオマヨを食べるが、オオマヨを食べると変化し、オアレ稲も、そしてあらゆる草木を食べつくす。すさまじい勢いで増えるヒシャを食い止めるためには全て焼き払うしか手はない。だが、ヒシャがまだ来ないときに、あらかじめ畑に火を放つことへの激しい抵抗があり、どうしても食い止められない。全土に命令できる皇帝の力を借りるべく王都に向かうが、皇帝もまた、全土のオアレ稲を一度全て焼くという建言は受け入れてくれなかった。皇帝に匹敵するのは香君のみ。香君オリエは、全土を救うために自分が矢面に立とうとするが皇帝を補佐し、実質的に国を動かす新カシュガ当主で富国ノ大臣イールの陰謀で毒に倒れてしまう。アイシャは、倒れたオリエの代わりに、新たな香君として立ち上がる。政治駆け引きと、目の前の利益で広がるヒシャの恐怖。全土が倒れるギリギリの状態で、どうやって民を救うか? 細い小さな路を選び、民と共に生き抜こうとするアイシャの姿が魅力。巻末に、植物と香の世界の参考書があり、いろいろ読んでみたいと思わされた。