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わたしが鳥になる日

 

デセンバーはもうすぐ12歳。いろいろな里親にあずけられたことがあるが、長続きしたことはない。デセンバーの背中には傷がある。それはその下に翼がある証。いつかそこを突き破って翼が広がり、空を飛べるようになることをデセンバーは知っている。だからその日のために、何度も飛ぶ練習をした。まだ、成功したことはなく、けがを負うだけだとしても。こんどの里親はエリナー。里親になるのは初めてだという。どうせすぐ追い出されると思うが、エリナーは注意したり、いろいろ聞き出そうとしない。鳥としてヒマワリの種ばかり食べてもやめさせようとはしないでくれる。野鳥保護の仕事をしているエリナーの手伝いで、アカオノスリヘンリエッタの飛行訓練を手伝うことになったデセンバー。学校では友だちを作るつもりはなかったが、よってたかって嫌がらせをされても毅然としているシャリルリンに声をかけられ、しだいに近しくなっていく。だが、デセンバーは怖い。大切に思うものができると、失うことは、さらに恐怖となるから。少しづつ心を開きたいと思いつつ踏み出せないデセンバーのためらいと不安、いつか羽ばたきたいというあこがれのイメージが印象的。不愛想な行動の下にある繊細な心、こうした人間は自分の近くにいるかもしれないと考えたりしてしまった。