児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

わたしは夢を見つづける

 

散文詩の形式で書かれた作者の子ども時代からの物語だが、切れ切れの思い出から一つの人生が語られるような雰囲気が素晴らしい。南部出身の母さんと北部出身の父さんは、ジャクリーンが幼いころ別れてしまう。南部の祖父母のもとでの暖かい暮らし、そしてニューヨークで仕事を見つけた母の元へ行って始まる、ブルックリンの暮らし。まだ差別が色濃く残り、幼い子を守るために、無理せずにバスの後部座席(かつてはそこしか座れなかった)に向かう祖母や母の姿。だが、当時にさまざまな抵抗運動の歴史を知る。決して暴力を使わず、粘り強く続けられる闘争(黒人は座ってはいけないというレストランの席に座るなど)、その誇り高さをみると、そうした黒人たちを平然と差別した側の心の内は、どうだったのかと思うほどだ。優秀な兄や姉へのひけめ。だけれど子どもの内から作家になると確信するジャクリーン。子どもの目から見つめた、一つの世界が立ち上がってくる。全米図書賞、ニューベリー賞オナー等、アメリカの主要な児童文学賞を総なめにした、というのも納得。