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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

世界を平和にするためのささやかな提案

 

22人のおとなによる、それぞれの体験や実践にもとづく世界平和への提案。7年前の刊行だが、より不穏に悪化している内外の社会情勢を、すでにつきつけられていたのだと、あ然とする思いです。

たとえば、戦争・紛争の原因となる資源や武器の保有についてウクライナの名が挙がり、だから今、抗戦し続けられているのだということを知る。また、伊勢崎賢治さん(武装解除人)は、「危機感」が煽られ「集団の空気が醸成されてゆく」メカニズムは戦争も就活も同じだと指摘。

今まさに日本も世界も分かれ道にいるのではないかと感じます。
でも、悲観しあきらめてはいけないと、エッセイストの小島慶子さんが言っています。平和のイメージは「一晩で雪のように世界を覆い尽くしてしまうものではなく、花のようにあっちに咲いては散り、こっちに咲いては散り……だからこそつくりつづけなくてはならない」のだと。

声優の池澤春菜さんが、違いや同じことを知るためには「本を読むのが一番じゃないか」と書いており、最後を締める加古里子さんの文章と合わせて、私は、石井桃子さんの言葉を思い出しました。「どうしたら平和のほうへ向かってゆけるだろう、と、人間がしているいのちがけの仕事が、「文化」なのだと思います。」(『石井桃子の言葉』新潮社、p102 ほか)  (は)