児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

はだしのゲン 第3巻 麦よ出よの巻

 

物置に住まわせてもらうことになったゲンと母親、生まれたばかりの妹。ゲンは家賃と食費を稼ぐため、ある屋敷で療養する政二の世話をすることになる。学徒動員で被爆し全身にやけどを負った彼は、体中にウジがわき、家族も近寄らず、ただ寝かされていた。好きな絵も描けず生きる希望を失っている彼に、ゲンは「死ぬ気になれば口でも絵はかけるわい」と励ます。
辛抱づよく世話して帰る途中、ゲンは戦争孤児の隆太に再会。食料を盗んで追われていた。ゲンは稼いだばかりの3円を百姓たちに払い、隆太を家へ連れて帰る。
そして、1945年8月15日終戦。家々に灯った明かりに平和の喜びを知るゲン。しかし戦争は終わったが、国民にとっては「地獄の苦しみ」の始まりだった。日本中が飢えて心はすさみ、被爆者への差別。ゲンの母親が倒れるも、医者は、金も米も持たない患者を診てくれない。国外では、シベリア抑留、日本兵や移民の帰国は命がけ。それでもゲンは、疎開先からもどった次兄の昭と、自宅の跡地に種麦を植え、出てきた芽に力を得て、強い麦になることを誓うのだった。

私が子どもの頃に読んだときの強烈な記憶は、体中にウジがわくということを、ただ気持ち悪いと思ったことでした。そういう部分ではないメッセージを受け取れるように、高学年くらいから、大人が一緒に読みたいものです。 (は)