児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

はだしのゲン 第4巻 まっすぐ伸びよ青い麦の巻

 

1945年8月30日。連合軍司令官マッカーサー元帥が厚木飛行場へ降り立ち、日本はアメリカの占領国となった。
主権のない日本国民は、とにかく生きることそれだけに必死。「生きるためには、ドロボウだって人殺しだってやる」と子どもさえ口にし、アメリカ兵とつき合うことで食糧や金を得る女性たち。闇市にのさばるヤクザの存在が不穏な雰囲気を漂わせる。
ゲンたちは、予科練から帰った長兄浩二が加わり、6人家族での再出発。しかし、家族じゅうに栄養失調の症状が現れ、食糧を手に入れるために手段を選んでいられない。ゲンと隆太はヤクザに利用され、アメリカ軍の倉庫に押し込む作戦にのってしまう。徹底的に痛めつけられたゲンのかたきと、隆太は、ヤクザ2人を銃殺してしまう。そして、警察から逃げるところを別の組に助けられ、ヤクザの手先として生きることになるのです。
この巻では、戦争が人命を奪い、体を傷つけることに加え、人の心、人生を狂わせることに、思いを至らせます。
闇市で稼ぎ、商店をかまえるまでになった朝鮮人の朴さんは言う。「日本人は助けてくれない、信用できるのは金だけ。」
終盤、8月6日に誕生し生きる希望だった妹が短い命をとじ、打ちひしがれるゲンですが、頭に毛が生えてきたことに気づき、実る麦の穂を見て父親の言葉を思い出し、気持ちを奮い立たせて次巻へ続きます。 (は)