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はだしのゲン 第5巻

 

第5巻目は、戦争で身寄りのなくなった子どもと老人が生きていく厳しさが、胸に迫る。
1947年12月。ゲンは4年生になっていた。ある日、ゲンの学校を浮浪児たちがのぞきに来る。そのリーダーが隆太で、岡内組の少年行動隊だという。ヤクザは孤児を利用して盗みや殺しをさせていた。ゲンは、ヤクザの世界から足を洗わせようと、隆太たちを連れて帰る。力を合わせて家を建て、やはり原爆症で親類に見はなされた老人に保護者になってもらうことにする。
原爆投下から3年。原因不明の病気で亡くなる人は絶えないが、アメリカは報道を規制し、原爆被害を隠しつづけていた。とうとう、ゲンの母親が倒れる。命を助けたいとすがるように訪れたABCC(原爆傷害調査委員会)では、さまざま検査をされただけで薬も出されず。原爆症研究の”標本”扱いだった。その裏には、ABCCに患者を紹介して見返りを受ける医者。死体や骨を集めてアメリカ側へ売ることを、仕事にせざるを得ない者がいた。しかしゲンは、「しょうがない」と泣き寝入りしたくない。戦争とピカの犯人、協力してぬくぬくと生きている者を許さない。苦しんでいる自分たちが報われなくちゃいけない、捨て身になるなと、言い続けます。 (は)