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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

人間

 

「川」「海」「地球」「宇宙」と著して、もっと大きいのは「人間」だと、17年を費やした大作。人類出現の歴史、人体のしくみ、個人と集団の活動、という大きな流れをつくって解説し、多角的に浮かび上がらせました。
人類出現の歴史は、宇宙の誕生までさかのぼって解説。宇宙、生物の歴史はすべてつながっていると感じさせる、見事な構図です。

人体のしくみは、緻密な図解はもちろんですが、特に、乳児から青年までの成長を2ページで端的に説明した文章が、科学的かつあたたかく、名文です。こんな風に大きく、人の成長を見守れたら、どんな子もなんの問題ないのではないかと思われます。
個人と集団の活動については、人間の負の側面も描きます。学問や知恵、美しさの感性ですばらしい能力を積み上げてきたのに、「いまなお対立し、きずつけあい、血をながしているのが人間」。集団や社会としては、いまだ自律することができていない、という指摘は重いです。でも、最後はやはり、子どもたちに希望を託して。歴史・現在・未来を「やどしている」人間、その1人ひとりのすばらしさをたたえる言葉でむすんでいます。 (は)