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壁抜け男 エーメショートセレクション

 

ちょっと皮肉な雰囲気も漂わせる短編集。中高生向き。「諺」は、DVっぽい父親と、それにおびえつつも慕う息子リシュアンの向田邦子っぽい物語。偉そうにしているパパ、実は息子が同情して気配りしているのかもよ! です。「工場」は、死にかけている息子を工場に働きに出させなければならない家族の物語。少しでも休んだり止まったりすれば飢えて破滅するギリギリの状況は現在にも通じる? 「七里のブーツ」は、古道具屋の店先にある七里ブーツへの憧れ。貧しさの極地でも夢見る力は残ります。「執行官」差し押さえを生業とする執行官が、天国行のために善行をはじめるけれど・・・。「政令」突然、政令で前後に時間が飛んだはずだったのに、過去に迷い込んでしまう男。「壁抜け男」突然壁をすり抜ける力を得た結末は? 気になるタイトルから読んで楽しみたい。