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終点のあの子

 

2008年の著者のデビュー作。ミッションスクールの高等部に新しく入ってきた朱里は、有名カメラマンを父に持ち、自由奔放。まわりの空気を読まず、自然に振る舞い、美術の授業では明らかな才能をみせるなどまわりをざわめかせる。まじめな希代子は、朱里に魅せられるが、あまりに振り回す朱里になんとか反省させたいという思いに駆られ、朱里を孤立させる作戦を建て、成功するのだが、結局自滅するような形になってしまう。このクラスを舞台として、やはりまじめな奈津子がひと夏の冒険として市民プールのアルバイトにチャレンジして男の子や、お掃除の叔母さんと出会う中でいりいろ考える「甘夏」。クラスで一番の美しさを誇る恭子が、夏休みに偶然のことからカースト最下位のオタクの保田と交流することになり、安らぎを得るのに結局は離れることになる「ふたりでいるのに無言で読書」。そして、あのみんなを翻弄した朱里のその後「オイスターベイビー」は、大学卒業まじかで、それまで感じなかった壁に突き当たる朱里の姿がみられる。どの作品も、登場する少女たちの切実な思いを感じ、目が離せなくなる!