児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

らいおんはしった

 

らいおんは、みんなと話がしたかった。きれいな花や夕焼けのこと、おいしい水のあるところのこと。でも、近づくとみんな逃げ出す。何年もひとりきりだった。

ある日、1頭のしまうまが、こちらに近づいてきた。また逃げられないかと、どぎまぎしながら挨拶すると、しまうまも「やあ、こんにちは」と返してくれた。らいおんはこらえきれずに、今まで心にためてきたことを全部はなした。そして、ふたりはずっと友だちになった。

らいおんの寂しい独白ですすんでいき、中谷千代子さんの絵が感傷を増す絵本だと、思っていました。このらいおんは、「たべてやるんだ」と言いながら、その迫力、怖さが少しもありません。私の1つ下の妹は、この絵本が「子どもの頃好きだった」と言うので、どんなところが?と聞くと。らいおんを前に全く動じないしまうまのたたずまい、美しさに「すごい!!」と思った、感動した!!、と即答。自然界ではありえないとわかっていたんだけどね、と。

こういう子どもの読み取り、絵のもつ力にはっとして、「人気作家のかくれた名作10選」とされたのも納得でした。 (は)