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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

新月の子どもたち

 

目覚めた時にいたのは独房。ぼくは死刑囚レイン、同じ死刑囚たちがみんな「ぼくはしぬ」という中で、「わたしはしなない」と答えた女の子シグに心を奪われる。そして気づけば、教室。小学校5年になったぼく、令は、声変わりに悩んでいる。うまく出ないガサガサの声。そしてこの現実の世界でシグではないか?と思う女の子を見つける。ファンタジーの世界と現実世界が交差するパターンの物語はよくあり、夢の中のトロイガルトという設定はそれなりに悪くないが、イメージ的であまり緻密ではないので、好き嫌いが別れるかもしれない。こちらの世界とあちらの世界の人物のシンクロとズレもちょっと場当たり? うまく出なかった新しい声が出るようになる声変わりを象徴的に使っているところは面白いが、5年生でこれを読む子は少ない気もする。岡田淳さんの『ようこそおまけの時間に』も夢と現実のシンクロだが、小学校5年生に進めるなら、断然『ようこそ・・・』の方。