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フランバーズ屋敷の人びと1 愛のたびだち

 

ヴァレンタインにはラヴロマンスを! 再読してみて、やはり一気に読み進んでしまうおもしろさだな、思った。5歳で両親を亡くし、親せきをたらいまわしにされているクリスチナが12歳で田舎のフランバーズ屋敷に引き取られるところから物語が始まる。21歳になれば莫大な財産を相続できるのを狙って、叔父のラッセルが、息子のマークと結婚させようともくろんで引き取ったのだという噂だ。狩りで大けがをしてから、生きがいだった乗馬と狩ができなくなって、常に怒りを爆発させるようになっているラッセル。この家では狩猟と馬が一番大切で、後は何一つ価値がない。着いたとたんに乗馬を命じられて呆然とするクリスチナだが、厩のディックが辛抱強くやさしく教えてくれたおかげで、まもなく疾走する馬の魅力に目覚める。マークも父そっくりで粗暴だが間違いなくハンサムで野性的な少年だ。対して弟のウィリアムは馬も狩猟も嫌悪しているが、この家ではそんなことは認められない。クリスチナが到着したまさにその日、落馬して足を負ったウィリアムは、あえてそのまま足を悪化させることで馬に乗る運命をやっとのがれ、父親から見放される。この家の母親はすでになく、馬が人間よりも良い暮らしをし、家の中は混乱の極み。ウィリアムは優れた頭脳をもち、当時発明されたばかりの飛行機に魅了されていた。ウィリアムの知性に引き付けられるクリスチナ。ディックはクリスチナが自分の馬を助けようとしたばかりに、解雇され、優秀な腕を持ちながら地元では職につけずに姿を消した。優しかったディックを、そんな目に合わせた悔いにクリスチナは苛まれる。そしてウィリアムは、ひっそりと飛行機の研究を近くのダーモット氏のもとで続けていたことがばれたのをきっかけに家から飛び出す。そしてクリスチナは自分の運命を選び取ることになる。この濃いドラマ展開! 読んでいてたまりません。