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月のケーキ

 

エイキンの晩年に編まれた珠玉の短編集。

「いくつかに、死の気配が漂っている」と訳者あとがきにあるうち、私が気に入ったのは「羽根のしおり」。母の死に立ち会えなかった少年が、お墓を7周まわるまじないで死に際に遺した母の言葉を聞くことができ、前に進む力を得る。じんわりといい読後感。

「月のケーキ」は、人生の希望を失った人のために作られる。材料は、桃、ブランディ、クリーム、タツノオトシゴの粉など。新月の夜にその特別なケーキを食べる集いに誘われた少年トムは、しかしある決断をする。

ほかに、ドラゴンを観光名物にしている町にドラゴン退治の騎士が来て・・・(「ドラゴンのたまごをかえしたら」)。都市開発や自然環境破壊をテーマとした「怒りの木」「おとなりの世界」など。 (は)