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くまのパディントン

 

ある日、ブラウン夫妻がパティントン駅で出会った、ちょっと変わったクマ。つば広の帽子をかぶり、スーツケースの上に腰かけ、首には「どうぞこのくまのめんどうをみてやってください。おたのみします」という札。「暗黒の地ペルー」からきたというこのクマを、夫妻は家に連れて帰り、「パディントン」と名づけます。

「行くところ、何かしら事件」を起こしてしまう「たち」のパディントン。大好物のママレードジャムで、体がべとべとになるのはいつものこと。百貨店で迷子になったと思ったら、ショーウインドウの中でディスプレイをめちゃめちゃにしていたり、芝居見物に行けば本当の出来事だと思いこんで憤慨し、楽屋へ乗りこんだり。

でも、そんなパディントンの言動が、事態をうまく収めることもまたあり。パディントンはたちまち、ずっと前からブラウン家の一員であったかのように馴染んでしまうのです。

パディントンを取り巻く人たちも魅力的。全面的にパディントンを受け入れる、ブラウン家の娘ジュディと家政婦のバードさんや、ココアと菓子パンをご一緒する「お十一時」仲間のグルーバーさんは骨董屋の店主。次の味方は、ブラウンさんの奥さん。少々抜けていて振り回されがちなブラウンさん。興味本位でいちばん外から見ているのは息子のジョナサン。

松岡享子さんの訳文は、イギリスらしい格式も伝えてユーモアたっぷりです。 (は)