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アリのかぞく

 

アリの家族は、1匹から始まる。春、女王アリが地面に穴を掘って作った部屋に卵を産む。卵や幼虫をなめてばい菌から守り、体に貯めた栄養を口移しで与える。まゆを作るときや成虫になって出てくるときにも手伝ってやったり、女王アリの世話の丹念なこと。

まもなく、誕生したはたらきアリは、すぐに幼虫やまゆを世話し始める。やがて、外へえさ取りに出かけたり、土を掘って巣を広げたり。はたらきアリが十分増えると、女王アリは卵を産むことに専念。実に20年近く生きて、卵を産み続けるという。

さてある日、このアリの家族に困ったことが起こる。硬い石にはばまれて巣を掘り広げることができなくなったのだ。そこで、新しい穴を掘って引越しを開始。はたらきアリは、卵や幼虫、まゆを運ぶのはもちろん、なんと、歩きたがらない(はたらきアリなのに!)仲間まで運んでいく。女王アリに対しては、あごをくわえて道案内をする。

そして1年後、家族は100匹ほどになるのです。

地面に近い視点と、巣穴の断面図がとても興味深い。助け合って暮らすクロオオアリの生態に驚きが満載です。巻末で、卵を引っぱり出して出産を手伝うはたらきアリや、お互いにグルーミングする姿など、さらに詳しく図解しています。 (は)