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中村哲物語 大地をうるおし平和につくした医師 (2023課題図書小学校高学年)

 

たまたま登山隊の医師として同行したことがきっかけで、医療支援に、さらに生活改善の必要性に気が付き水をひく水路建設につくした中村医師の伝記。現地のやり方を尊重し、現地が持続してできる方法で水路を作っていく姿勢を保ち続けたことは、驚嘆に値する。だが、最後は襲われて殺される、なぜそうなったのかの背景は、これを読んでもほとんど触れられていない。また、国会でアフガニスタン進攻に抗議したのに聞き入れられなかった事態も、そういうことがあったという形で書かれている。いわば、なぜそんな風になってしまうのか?という不条理には触れられていない。これは、自分で調べて考えましょう、ということなのか。特にどこにも肩入れしなくてもいいから、そうなった背景には、もう少し触れてもらえたら、中村哲氏の置かれていた過酷な状況がより理解できたのではないかとおもった。