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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

僕たちは星屑でできている

 

難民支援の仕事をしていた太陽のような母親が死んでしまったナタリー。独裁国家に反対の声をあげて殺された父、徴兵で国に使いつぶされるのを逃れようとして友人テスファと共に国を出たサミー。二人の言葉が重なるように語られる。母の死後父・兄・ナタリーの絆はバラバラとなり、父の仕事が安定しない中、値上げした家賃が払えずに思い出の家を追い出されることになる。仕事をみつけられない兄は、是悲しみと絶望の中、移民が仕事を奪っているという主張に呑み込まれていく。ナタリーはどん底の中から、母親がしようとしていた難民支援募金のためのドーバー海峡横断チャレンジを決意する。サミーたちは越境請負と頼った男にとらわれ家族への身代金要求のために拷問を受ける。どうやって調達したかわからないが、やっと解放される。海を渡る船は小さく難破。かろうじて助かるもテスファは目の前で海に消えた。そしてナタリーは兄が移民の同級生に暴行を働いたことを知る。どうすればよいかわからない絶望の中で進もうとする二人の軌跡は、まるで重なるようにオーバーラップする。なんとか知り合いのいるイギリスに向かおうとするサミーだが、次から次へと困難が立ちふさがる。日本は難民認定が困難で有名な国。同時に、まともに生きていけない仕事しかない絶望の不満のぶつけ先がヘイトになる心情。どうすれば、解決にいたるのか? 課題は重い。