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リスペクト

 

2013年にロンドン東部で実際に起こったFOCUS E15運動と、同運動が2014年に行ったカーペンターズ公営住宅の空き家選挙・解放運動を元にした作品。突然公営住宅から追い出されることになったジェイド、ギャッピー、シンディたちシングルマザーは、市役所に抗議市にいくも、ただのクレーマー扱いで「そのようなリスペクトに欠ける態度は許容しません」と追い返される。しかも市役所と公営住宅を受託する住宅管理協会は、互いに責任を押し付け合って問題を取り上げてもくれない! 自分たちでなんとかするしかない、と近所のスーパーで通行人に呼びかけてもみんなただ通り過ぎるだけ。過去運動家としてのキャリアがあるローズが、見かねて3人に助けの手を伸ばす。この事件を見ていた大手新聞駐在員の史奈子は、当初無関心だが、かつての恋人幸太が、アナキストとして事件を見に来たことから、関わることになる。利益のために公営住宅をリノベーションし、貧乏人を地方に追い出す政策。ジェイドたちは、取り壊し予定で大半が空き家の公営住宅を占拠して住み始める。上昇する家賃に鬱屈がたまっている市民の支持を受け、壊れた空き家は住めるように整備されていき、ついに市長から(選挙対策バリバリながら)謝罪の言葉を引き出して、市内に住見続ける権利を勝ち取った。だが、顔が売れたためにイジメを受けた子どもたち。目立った運動家たちは良い場所だが、後はひどい場所に住居があてがわれ分断される仲間と、すべてがめでたしではない。けど、誰もやってくれないなら自分たちがやる、自分たちはリスペクトされたいのだ! と気が付くジェイドたちの姿は、とても魅力的。