戦争ばかりだった子ども時代や、原爆投下後の惨状は、少女にとってどのようなものだったか。
大けがを負った友人を担架に乗せ、ころがる死体をはだしで踏みながら運んだ感触。「人間の心をなくしていた」と言う。証言をもとに高校生が描いた絵*からも、著者の体験そのものが迫ってくる。
「壮絶な8月6日を生き抜いても、『生きるか死ぬか』を感じる毎日が続いた」戦後10年。孫娘のすすめで70歳から証言活動を始め、アメリカで語る体験により「許せる」気持ちになったそうだ。
ある1人の体験談ではあるが、そのほか数多の人それぞれの体験へと思いを広げるきっかけになると思う。
コラムとして、広島の小中高生が学ぶ学習ハンドブックの内容が補足。 (は)
*『平和のバトン』(くもん出版、2019年刊)で取り上げられている「原爆の絵」プロジェクト