1941年12月の真珠湾攻撃を機に行われた、日系人の強制収容。アメリカ西海岸に住む12万人以上の人々が、有刺鉄線に囲まれた収容所へ移送された。
そのうち、砂漠地帯にあるマンザナ―収容所で、3人の写真家が、それぞれの立場や信念から撮った写真、また撮ることのなかった事実を、イラストと文章であらわしたのが本書。
1人は、政府の命で現地に入ったドロシア・ラング。収容の人道性を示すという目的から、撮影場所の制約や監視を受け、非公開とされた写真も多かった。彼女自身は、政府の不正と非人道性を伝える使命を、心に抱いていたけれど。
2人目は、強制収容の当事者、宮武東洋。密かに持ちこんだレンズで、監視の目をくぐりぬけながら、「二度とあってはならない」事実を記録する強い決意でシャッターを切った。
3人目のアンセル・アダムスは、友人だった収容所長による依頼。大空と山を背景に、明るくけんめいに生きる日系人たちの姿を選んで撮った。そうすることで彼らの「忠誠心や愛国心」が伝わると考えたから。
「完璧な」アメリカ人になろうとしても、ひとたび戦争になれば、人権侵害が正当化され、戦後は沈黙せざるを得なかった日系人たち。本文後の解説や写真家の経歴、著者・画家のあとがきでは、市民権や差別される人種間の問題などを考えさせられ、読みごたえがある。
数ある写真の中でも、収容前の荷造りを終えた農夫が煙草を片手に地面を見つめる姿が、強く印象に残りました。 (は)