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ボクの故郷は戦場になった―樺太の戦争、そしてウクライナへ

 

著者は南樺太に生まれ、4歳の時に日本が無条件降伏。しかし、南樺太は、ソ連軍の攻撃を受け続けていた。幼い目に映る戦車の行軍、防空壕で聞く機銃掃射の音、血にまみれて横たわる人々。

著者は、今、ウクライナでの戦争が日々刻々、リアルな映像と共に世界中に報道され、支援が送られることと、当時”孤独”な戦禍にあった樺太とを、思う。南樺太には、ロシア革命後亡命してきたウクライナ人が多く定住していたから。

一方で、ソ連占領下でのソ連軍の青年との交流から悟ったのは、「戦争は国と国との戦いで、人と人との戦いではない」ということ。また、そもそも日露戦争での南樺太占領、第二次大戦後にそこでおこなわれた朝鮮人迫害という、日本人の加害の歴史にもふれる。

そして、テレビ制作の仕事で43年ぶりに訪れた故郷がすっかり異国の文化圏になっていた寂しさ。

1人の少年の体験を通して、樺太という土地の激動、領土問題と戦争について考えさせられます。 (は)